「シルバーウィークって、なんかお年寄りに失礼な言い方やな。」
ばあちゃん想いの次男が、おもむろにこんなことを口にしました。いろいろとツッコミどころがありますが、どうやら、「敬老の日=シルバー」というイメージにひっぱられたようですね。
さて、そんな(?)シルバーウィークですが、ちょっと気になって国の交通量のオープンデータを使い、県内8か所の観測点を通った車の数を調べてみました。
比較するのは、連休の5日間(9月19日〜23日)と、その2週間前の同じ曜日並び(9月5日〜9日)です。
8か所の中でいちばん増えていたのは、三豊市・琴平から南へ、徳島のほうへ抜けていく国道32号でした。1.7倍。祝日の9月22日は9,380台で、2週間前の同じ火曜日(4,523台)の、ほぼ倍です。
確かに・・・県内でも三豊・琴平が特に観光客が多いというのは納得の結果で、実際に住んでいる体感とも近い感じです。
ちなみに、綾川町のお隣、綾歌町を通る国道32号(綾南・綾歌・満濃バイパス)は14.6%でした。確かに、町内を走る国道32号はいつもよりちょっと多いかなぁ、くらいの感じでしたね。
それにしても便利な世の中になりましたね。私のような文学部出身・超ド文系の人間でも、たった指示一つで簡単に、国のオープンデータを集計・活用できるようになったのですから。
今回は、そんな便利なデータ集計のお話、とりわけAIのような自動ツールにまつわる体験談です。
見えない「売上」。でも、実感のある記事にしたい
前回、綾川町には961軒の事業所がありました、という話を書きました。その最後に「この961という数字は、一度出した数字を、調べ直したものです」と、書いています。
当初の構想では、令和3年の経済センサスを基にして、自治体毎の民間事業所の売上高を集計し、その商業規模を比較しようと思っていたんですね。
しかし、実際作業してみるとこれが案外難しい。その地域にあるのが本社なのか、支店なのかで、どこの地域の売上に計上されるかが変わってくる。
例えば、直島の例でいうと、集計方法の違いで、約4,200億円と約26億円という全く桁違いな結果が出てきます。どちらも本物の数字でありながら、同じ町とは思えない開き具合です。
なので、前回の記事は売上高ではなく、「軒数」を採用することにしました。「お店が何軒あるか」の視点なら、私や皆さんが町を歩き、車を走らせて、自分の目で見える「実感」の記事として、読んでもらえると思ったからです。
本物のデータを使ったら、高松市の売上0円になりました
ところが、早速ツールで集計してみると、奇妙な結果がはじき出されます。最初の集計結果では、高松市の「いわゆる売上高」が0円と出てきたのです。
私が使っているツール(もちろん、Claude Code と相談しながら作成)では、まず国の統計サイトへ本物のデータを取りに行きます。当然、取れた市町はその値をそのまま使うのですが、取れなかった市町については、全国平均売上高から推計した数字を掛け合わせ、穴を埋めようとしていたのです。
香川県17市町のうち、データが返ってきたのは8市。高松市、丸亀市、坂出市、善通寺市、観音寺市、さぬき市、東かがわ市、三豊市。県内の主要な市が、きれいに並んでいます。
しかし、です。なんと、かえってきた8市の売上は、すべて0円だったのです。データを受け取る側の設定が、統計表の形と合っておらず、売上の欄だけを読み取れていなかったのです。
一方、データが取れなかった9つの町には、「推計から算出した」数字による掛け算の答えが入りました。
・・・つまり、本物が取れた市はゼロになり、推計で埋めた町だけが、売上の上位に並ぶ、という結果が出来上がったのです。
ちなみに、この(誤った)集計方法で1位だったのは琴平町でした。それは、琴平町の商売規模の問題ではなく、琴平町のデータが取れなかったからなんですね。
0円は分かりやすい。では、「綾川町のお店:1,625軒」は?
「高松市 0円」と表示されていれば、「さすがにそれはないやろ!」とすぐ気付きます(いや、気付かねばならない)。
そしてもう1つ、上述の「推計した掛け算」には「お店の数」も含まれていまして、ここではその数字についても見ていきたいと思います。
実は、当初の集計では、綾川町の「卸売業・小売業」は、1,625軒と出ていました。しかし、実際は前回の記事にある通り、綾川町の卸売業・小売業は265軒が正しい数だったんです。
1,625軒に265軒。
その差、なんと6倍です。
桁が2つも3つも違えば、さすがに気づきます(いや、気付かねばならない)。でも1,625軒、6倍という数字は、なかなか微妙だとは思いませんか?「事業所という数え方だから、支店や事務所、工場も1つ1ついれれば・・・」と、納得しがちな数字です。
けれど・・・どうでしょうか。
「卸売業・小売業」とは、私達が普段買い物をする、いわゆる「お店」に近い種別であり、私達にとっても身近で馴染み深い業態です。だからこそ、町を歩き、車を走らせながら見ている肌感覚としっかりと照らし合わせてみるべきでした。
本来ならば、いや、願わくば、と言った方がいいかも知れない。毎日の暮らしを営んでいる私達のほうが、この数字については「資料」や「統計」より詳しい!と胸を張りたいところです。
出典は確かに本物が付いている。だが、数字はどうだ・・・?
さて、今回のツールでは、調査に使用した出典を明記するように設計されています。
- 出生数増加率 ← e-Stat 人口動態統計 00450011
- 一人当たり所得 ← e-Stat 市区町村税課税状況等の調査 00200553
こんな感じです。
e-Statは、国の統計をまとめて公開している政府のサイトです。横の数字は統計表のコードで、これらはすべて実在しますし、当然、統計の名前も全て正しいものです。
参考に、集計してもらった数値をそのまま、以下に紹介してみます。

ツールが「旦那!e-statからしっかり取得してきましたゼ!」と報告してきた実際の中身です。どうです?ぱっと見た限りでは、本物の数字に見えますよね・・・?
しかし、この数字も実際の数字ではなかったのです。この結果は、私を欺く仮の姿。その仮の姿で私をあざ笑うかのように、「旦那、これは本物でっせ!」と「本物の出典」がきれいに書き添えられていたのです・・・。
そして一覧の末尾には、こうありました。
本データソースリストはシステムが自動生成しました。実際のキャンペーン展開前に最新統計データの確認を推奨します。
(!)・・・
なんと、「旦那!このソースは勝手に作っちゃったから、このサービスを開始する時には、ちゃんと最新の統計データを見る事をお薦めするよ!」
という事ですね。恐らく、ツールを組んでいくのに、色々とテストを繰り返しながら組み立てたんです。その流れの中で、「テストなら、一旦こっちで作ったので試す方が早くね?」みたいな感じになったようですね。
そう、彼(=ツール)は悪くなかった。ちゃーんと私に、最終的な確認を推奨していたのです。
そしてもう一つ、実は、この一件を書き留めたメモを読み返していて、見つけたことがあります。私が残しておいたメモには、こう書かれていたのです。
琴平町(人口 8,547人)
実際、琴平町の人口は、令和2(2020)年の国勢調査で8,468人。差は79人、率にして0.9%です。桁も位も違いません。この2つの数字が並んでいても、違和感を感じる人は、ほとんどいないでしょう。(違和感を感じられる人は、かなりデキる人ですね)
前述の高松市の0円、綾川町の1,625軒は、現実を知っている人なら、少し考えれば「ちょっとおかしいよなぁ」と分かる数字でした。
でも、この8,547人、0.9%の誤差は、なかなか気づける数字ではありません。このまま計算や統計を進めても、全く問題ないよね、と言えるレベルの誤差です。ただ、根拠としては、他の統計ベースと同一とはいえない、揃っていない、ということになります。
【最後に】数字は、道具が数えてくれる。だが違和感は・・・
大きな間違いは、肌感覚で気づきたい。小さな間違いは、確かめる手間が見つけてくれる。
思えば、ツールはちゃんと「最終的な確認を推奨します」と書いていました。手間を省いたのは、ツールではなく、私のほうです。
冒頭で、次男が「シルバー」という言葉の印象にひっぱられた、というお話をしましたが、私も「e-Stat」「統計表コード」という、いかにも本物らしい名札にひっぱられて、中身を見ないまま、確かめたつもりになっていたのです。
今、世間ではAIツールの使用頻度・領域がどんどん広がってきています。もちろん、私もこの便利なツールを手放すことは考えていません。
ただ、ツールが引っ張ってきた数字が、その町の姿に、実態に合っているかどうか。それを確かめられるのは、その道を走り、店の前を通っている人間の肌感覚です。
連休の国道32号の交通量を「いつもよりちょっと多いかなぁ」と感じた、その感覚のほうが、先にあるのだと信じたい。
AIが導き出すその数字が、自分の知っている現実の姿と少しでも違って見えたときには・・・どうか、その違和感のほうを信じられる自分でありたいと思います。
なので・・・親としてまず次男には、シルバーウィークの「シルバー」が何なのか、その由来と出典をしっかり確認したうえで、伝えようと思います。。。
※ 冒頭の交通量は、国土交通省・JARTIC 交通量オープンデータ(1時間交通量)の香川県内8観測点(常時観測点コード 8110010/8110020/8110030/8110040/8110070/8110080/8310020/8310040)を、2026年9月29日に取得して集計したものです。
※ 直島町の売上高は、令和3年経済センサス‐活動調査(e-Stat 統計表ID 0004006324〈事業所単位〉/0004006360〈企業単位〉、売上は2020年1年間)の製造業の値で、事業所単位420,011百万円、企業単位2,608百万円です(2026年9月29日取得)。
※ 本文中の実データは、綾川町の事業所数が令和3年経済センサス‐活動調査 速報集計(e-Stat 統計表ID 0003449718)、琴平町の人口が令和2年国勢調査(同 0004019309)によります(2026年8月取得)。「推定売上」として引用した金額(47,716億円など)および事業所数(1,625軒)は、いずれも隔離済みの検証用出力に含まれていた推計値で、統計の実数ではありません。1軒あたり4億円は当該プログラムに定数として書かれていた値です。事例に用いた資料はクライアントへ提出する前に確認したもので、外部への影響は生じていません。







