さぬき漆発見会(みどりの学校@香川県)-漆、麗し。-

さぬき漆発見会 参加までの長い道程

萩焼の話がなければ、その出会いはなかった

私と「香川漆器」との初めての出会いは
今をさかのぼること16年前 
結婚式の引き出物を選ぶ時でした。

懐かしい結婚式の写真(お寺で仏式でした)

妻の実家は山口県。山口といえば萩焼。


何と義父の知り合いに萩焼の作家さんがいて
その方のお皿を引き出物に・・・

という話が進んでいたのです。


当時の私は香川漆器はおろか
「萩焼」と聞いてもピンとも来ない若者だったんですが


 
「それなら、こっちは香川漆器がえんちゃん?」
と言う母のアドバイスを受け 

 
確か当時はまだ栗林にあった
漆器山富さんに、右も左もわからぬまま母に連れられ


象谷塗(ぞうこくぬり)のお盆を選んだという
記憶の扉が少ーし開いています。
(ちょっと自信がない)

   

※ちなみに、この引き出物の件がご縁で、この作家さん(大和稔さん)は香川で個展を開かれているんです。

香川漆器との再会は偶然に

そして、昨年、塩江のイベントで、NPO法人わははネット 中橋さんに偶然お会いしたことから、香川漆器との再会が果たされました。

※塩江での絵本ワークショップの様子はこちら↓

2022年4月に開館した讃岐おもちゃ美術館に設置する漆の滑り台についての撮影・編集をさせて頂いたのです。

 

  

そして、今回のさぬき漆発見会。 

漆を掻く臼杵さん

知人に紹介いただいた中田漆木・中田大輔さんがシェアしていたのを拝見し

「3度目の正直」ではないけれど
これも何かの縁
、と。
 
 
香川県民でありながら
香川漆器に触れてこなかった


その悔いを改めるため
参加申し込みをしたのでした。



さて、今回の案内を見ると
香川県みどり整備課の「みどりの学校」シリーズ
 
 
素直に「あれ?漆芸(伝統工芸)なのにみどりの学校なの?」
と無知な私は思ったのですが
 
 
今回参加してみて、なるほどこれは里山保全に関わることだな
と納得した次第です(その理由は後述)。

   

さぬき漆発見会の内容

道なき斜面を、漆を求めて・・・

さて、さぬき漆発見会の内容ですが
実は私道を間違え、少し遅刻をしてしまい・・・(汗
 
  
主催であるNPOさぬき漆保存会の説明の後

今回の開催地である
臼杵工房の臼杵春芳さんの案内で

参加者皆で「臼杵さん所有の」山へ移動。

臼杵さんがしきりに
「危ないので気を付けてくださいね」
と仰るので
   

「家(工房)から近くの漆を見に行くだけですよね・・・」
と高を括っていたんですが・・・

 

結構な斜面を横切って進みます

まさかの急斜面をみんなで進む・・・!

  

漆には水分と水はけが必要

聞くと、漆には
たっぷりの水分が必要なのと同時に
水はけがよくないといけないらしく


こういった斜度があるところじゃないと
十分漆が採れる木に育たないそうなんです。

 

スタッフのおひとりは、庭で育てようとして枯らしてしまったとか・・・

漆はそんなに簡単には出てくれない

少量ずつしかとれない漆

漆って、もっと「どわーっ」と
出るのかと思っていたんですが
  
 
ウルシから出る、その乳白色の液は
想像以上にじわーっと出るもので


素人目に、これは途方に暮れる作業やなぁ・・・
と実際を目にして思ってしまいました。
 
 
臼杵さん曰く
(同じような白い液でも)ゴムの樹液とは違う
「ゴムの樹液くらい出てくれたら
(掻くのも)もっと楽だけど。
みたいに仰ってました。

漆掻きはストレスとの勝負

掻いた木は、すぐには漆が出ないので 
一つ傷をつけては、漆が出る間に他の木を掻き
複数の木を行ったり来たり。

にじみ出る乳白色の漆

深く掻けばたくさん出るわけでないそうで
逆に木を痛めることになるそうです。

 
漆がたくさん出る、出やすい
絶妙な深さがあるようで

  
要は、木にストレスをかけすぎないよう
ベストな状態で漆を出してもらわないといけない

しかもそれが漆の木1本1本違うという・・・

漆を掻く方も大変なストレス・・・

漆をとるには

「掻く」方も「掻かれる」方も
大変なストレスにさらされる
んですね。

漆発見会で見えたもの、感じたこと

作家が漆の植樹からしなければならない現状

この漆発見会に参加するまでは
臼杵さんのような作家さんが

漆の栽培からされている
そのスタイルに何の違和感も
抱いてなかった
んですが
 
 
皆さんのお話を聞いていくにつれ
そうせざるを得ない切実な現状にあること
 
 
国産漆の需要に対して供給が追い付いていない
(しかも漆が採れるようになるまで、植樹から10年かかるとか!)

そもそも漆芸品は(他の伝統工芸等と同じく)
分業制であったのが、担える人材がいなくなっている
 
 
そんな現状が分かってきました。

 

最後の座談会では、香川の漆器産業に関する
お話なども(結構ざっくばらんに)出て 
とても楽しく勉強になりました。

ざっくばらんな雰囲気の座談会

と同時に
漆の世界にほんの少し触れたことで
 
 
プラスチックや100均の器に駆逐されがちな
我が家の食器類に
一抹の物足りなさ、味気無さも感じました。

最高級と言われる国内産の漆も見せて頂きました

    

気になる漆コーヒーのお味は・・・

漆器に入った漆のコーヒー

この日、座談会でいただいた
漆の実を焙煎した漆コーヒー。(もちろん、漆器のカップでいただきました)
 
 
私には、コーヒーというよりお茶
(なんとなく香りは、ほうじ茶に近い気が・・・)
という感じがしましたが

漆の実。実からロウソクの蝋も取れるんだとか!

私は食レポ向きではない
(舌には自信がない)タイプなので(笑

ぜひぜひ、どこかで機会を見つけ
皆さん自身の舌で味わっていただきたいです。

漆器へのまなざしが大きく変わった1日でした

会の最後には、
何故この「漆」がみどりの学校として
開催されたのか
、はっきりと分かりました。 
 
 
漆の木が育つ土壌には、このように
人が手入れして、漆を採りやすくした
里山の土壌が必要です。

漆に興味を持ち、その世界に目を向ける
一般の人が増えるということは

 
 
こういった漆が育つ産地にも目が向けられ
結果、豊かな香川の「自然」が守られることにつながります。

  
 
伝統の継承と自然環境の維持。
漆器に対する見方が大きく変わった1日となりました。
 
 
NPOさぬき漆保存会のみなさん、ありがとうございました。

【余談】
奇遇にも、NPOに綾川町在住の作家さんがいてびっくり。
世間は狭いものですね。